スパイニーイールとは
写真提供:オオツカ熱帯魚
学名 Mastacembelus erythrotaenia
欧米ではウナギの形をした魚をイール(eel)と呼ぶ。
これはウナギ属に属していなくとも広く使われる事が多く、デンキウナギ(electric-eel)などは最も良い例である。spiny-eelも一般的にはトゲウナギ として親しまれているが、ウナギとは全く縁がない。
スパイニィイールはアジアに2属、アフリカに2属分布している。学術的な位置づけは曖昧で、現在はタウナギ目に分類されている。
アジアのスパイニーイール 東南アジアに分布 体長10~100cm 推奨水槽:個体に合わせたサイズ |
アジアのスパイニーイールは、MacrognathusとMastacembelusの2属に分かれる。 この2属の違いは鼻先の鼻孔のある突起の形状で、4本のうちの2本が長いのがMastacembelusで、4~6本が同じ長さで房状になっているのがMacrognathusである。 また棘の数も異なっており、Mastacembelus12~31本に対しMacrognathusは33~40本である。 最も大きな違いは成魚のサイズで、Mastacembelusは30cm以上に対し、Macrognathusの多くは30cm未満と小さいのが特徴。 ファイアー・スパイニーイール(Mastacembelus erythrotaenia) タイからインドシナ半島に分布する大型種で、最も人気がある種の一つ。 メコン水系の中~下流域に生息し、成魚はマングローブの生い茂る汽水域の泥地に棲む。 体長1mにまで成長する大型種である。 ジグザグ・スパイニーイール(Mastacembelus armatus) インドネシア、スリランカに分布する大型種。 模様が下腹部にまで入らない。全長は最大80cmと大きくなる。 タイヤトラック・スパイニーイール(Mastacembelus favus) タイからマレー半島に分布する大型種で、主にメコン水系生息する。 非常に鮮やかな模様を持ち、古くから人気がある。 但しその気弱な性格故、他魚との相性が悪く虐めから衰弱してしまうケースが多い。 最大で70cmになる大型種である。 バンデッド・スパイニーイール(Macrognathus aculeatus) インドネシアに分布するお馴染みの種で、全長は25cm程。 ピーコック・スパイニーイール(Macrognathus siamensis) 東南アジアに広く分布するスパイニーイールで、背鰭から尾柄部にかけて並ぶ眼状斑が特徴。 体長は25cm程度。 イエロー・スパイニーイール(Macrognathus pancalus) インド、パキスタン、バングラデシュに分布。 10cm~20cm未満と小型である。 インディアン・ピーコックスパイニーイール(Macrognathus aral) インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパールなどに分布。 小型種には珍しく綺麗な模様が浮かぶ。時には汽水域にも生息する。体長は30㎝程。 |
アフリカのスカイニーイール 西アフリカ、タンガニイカ湖、マラウィ湖などに分布 体長20cm~70cm 推奨水槽:個体に合わせたサイズ |
アフリカ産のスパイニーイールは、種類も多く魅力的な種が多いのが特徴でもある。 ただ我々が目にするほど流通量が多くなく、希少価値の高い魚である。 現在Aethiomastacembelus とCaecomastacembelus の2属が分布している。 飼育に関してはこういった属レベルの違いよりも、湖産・河川産の違いが重要となってくるため、その違いを見極める事が重要である。 クニングトントゲウナギ(Aethiomastacembelus cunningtoni) アフリカはタンガニイカ湖に生息。体長は58cm程。 マラウィトゲウナギ(Aethiomastacembelus shiranus) アラウィ湖に生息。流れの低い部分の雑草地、又は石間に隠れ棲む。体長は30cm程。 カエコマスタセムベルス・フレナトゥス(Caecomastacembelus frenatus) タンガニイカ湖に生息するマーブル模様が美しい種。 砂に潜る性質はないが、シェルターとなる岩組みなどは必要。40cm程になる。 カエコマスタセムベルス・フラビディス(Caecomastacembelus fravidis) タンガニイカ湖に生息するスパイニーイール。褐色の体に白っぽい斑点が入る美種。 輸入量は極めて少なく貴重種でもある。 |
スパイニーイールの飼い方(アジア産)
入手と餌について |
入の際の注意点は、当たり前だが元気な個体を選ぶ。 日中は砂に潜ったり物陰に隠れている事が多く、すぐに見分けが付きにくいものだが、網で掬う時に元気に暴れるくらいが丁度良いだろう。 逆に痩せてる個体やふらふらしている個体は絶対に購入しない。 餌はイトミミズやアカムシを与え、慣れたら配合飼料も与える。 但し配合飼料の単用は、個体によって痩せてしまう場合もあるので様子をみながら与える。 魚食性は強くないが、大型種は小魚も食べてしまうことがある。 |
水槽&底砂について |
水槽は種類の大きさに合わせたものを選ぶ。 アジア産スパイニーイールはよく砂に潜り、吻と目だけを砂から出している事も多い。 その性質を活かす為にも底砂は是非敷くようにする。 敷く砂には注意を払い、幼魚時には出来るだけ目の細かいタイプを選んでやるように気を使う。 ある程度のサイズになれば細かい大磯砂でも構わないが、特に小さいうちは田砂などを用いる。 ソイル系の底砂は最終的に泥となるのであまりお勧めできない。 その他流木や岩組みなど、シェルターとなる場所必ず作るようにする。 |
水質、ろ過、管理について |
水質は中性付近を保てればよく、水温も25℃前後で良い。 ファイヤー・スパイニーイールに関しては、成長すると汽水域で生活する為、塩分を加えて飼育すると良い。 日常の管理は調子を見ながら水換えを定期的に行う。 砂を掘り起こす習性から目詰まりを起こしやすいろ過と相性が悪い。 |
混泳について |
スパイニーイール同士の複数飼育は問題ないが、コミュニティタンクで飼育する場合、十分に餌が行き渡っているか、また虐められていないか注意を払う。 餌が十分行き渡っていない場合は、消灯後に与えるなどの工夫をする。 捕食は早いが他魚に圧倒されることが多く、底棲魚がごった返すようなコミュニティ水槽には基本的に向かない。 またシクリッドとの相性は非常に悪く、徹底した虐めにより衰弱死してしまうケースもある。 |
スパイニーイールの飼い方(アフリカ産)
入手と餌について |
シクリッドが大繁栄するアフリカ産のスパイニーイールは、アジア産と違い日中は岩場などに身を潜め、夜間に行動する夜行性である。 輸入量は極端に少なく、売られているショップも限られて高価なのが特徴である。 アジア産に比べ非常にデリケートな為、信頼できるショップでの購入は勿論、丹念な水合わせなど基本も忘れないようにする。 餌はアカムシや小魚を与える。 意外なほど魚食性が強いので、食うようならばメダカを中心でも構わないであろう。 |
水質・管理について |
アフリカ産で気をつけるのは湖産か河川産かである。 湖産は弱アルカリ性の硬水を好み、水質自体はアフリカンシクリッドを飼う要領で問題ない。 サンゴ砂を用いることができるので、環境を整えるのは簡単である。 一方河川産は中性から弱酸性を好む。 水槽レイアウトは岩組みを中心とし、隠れ場を多く取ってやる事が大切である。 |
混泳の注意点 |
生活圏の異なる温和な種を選ぶのは基本的なことで、間違っても現地のようなアフリカンシクリッドと混泳させないようにする。 痩せてしまった個体には、ベアタンクにイトミミズを与えて回復させる方法も効果的である。 |