吸盤状の口で苔などを削るようにして食べる
プレコとは南米大陸に生息するナマズの一種で、正式にはプレコストムス(Plecostomus)と呼ばれる。
現在までに様々な個体が輸入され、近縁も含めて略称のプレコで親しまれている。
体長数cmのものから1m級の怪物まで幅広く、お掃除屋さんとしてのイメージを根底から覆す種類も存在する。
人気の理由には、飼育法・餌の確立が挙げられるのではないだろうか。
昔よりもずっと楽に、そして何より長生きさせられるようになったプレコの飼い方を紹介する。
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トリム系

ドラゴンハイフィンレオパードトリムプレコ(Megarancistrus parananus) 画像・けるぞうさん

サンフランシスコ川に分布。
彼らを苔取りや残餌係として飼う人はまずいないだろう。
これらトリム系プレコは大型で獰猛、苔取りどころか混泳すら難しい猛魚達である。
本種は草食性の餌よりも動物質の餌を好む場合があり、赤虫や配合飼料にもひと工夫必要である。
大型魚にとっては定番のキャットなどを与えると良い。
体長は最大で60cmにまで達し、流通値段も含めて正に怪物と言えよう。

主なトリム系プレコ
ウルトラスカーレットトリムプレコ(Pseudacanthicus sp.) 体長50センチ
トカンチス川に分布。
トリム系プレコの中で恐らく最も人気の高い種類。
黒の斑点模様に赤いヒレを持ち、見た目のインパクトに加え眼光も鋭い。
但し水槽内でその美しさを保つのはかなり難しい。
トリム系プレコは総じて大型になり気性が荒く、施設ともに飼い主を選ぶ魚である。ポンプなどが吹き飛ばされないように注意が必要。
アカリエスピーニョ(Pseudacanthicus histrix) 体長100センチ
アマゾン川全域に分布。
トリム系の最大種であり、最大で1mにまで達する怪物である。
個体によっては汽水域にも生息する。
苔がついたような成魚を見るとまさに「ヌシ」的な雰囲気さえする。
全長から考えるとあまり家庭的なプレコでない事は確かである。
パナクエ系

ロイヤルプレコPanaque nigrolineayusグリーンロイヤルプレコ(Panaque nigrolineayus var.) 画・けるぞうさん

ロイヤルプレコ=コロンビアに分布 グリーンロイヤル=トカンチス川に分布。
パナクエ系の特徴は頭の大きさである。
頭の大きさから厚みを感じ、独自の迫力を感じさせる。
入荷量も多く、プレコの中でも人気が高い種である。
個体に差があるものの総じて気性が荒く、混泳には不向きなプレコである。
ロイヤルプレコを飼うにあたって一番重要なのは流木を入れること。
流木はシェルターになるだけではなく、貴重な食料にもなるため、飼育には必ず流木を入れるようにする。
また弱酸性の水質を作るのに一役かってくれる点も見逃せない。
ただヤスリのような口で流木を積極的に齧るため、ろ材の目つまりには十分に注意が必要である。
また水槽のシリコン、アクリル水槽などをガジガジと齧るので何かとトラブルが多い。
体長は最大で30cm程度まで成長する。
主なパナクエ系プレコ
プラチナロイヤルプレコ(Panaque nigrolineatus var.) 体長50センチ
シングー川に分布。
名前の通り黒とプラチナのストライプが気品を感じさせる非常に美しい種類である。
見た目の華やかさとは裏腹に、気性が荒くまた大食漢である。
また意外と大きくなる事でも知られ、パナクエ系の最大種で60cmにまで成長する。
ブルーアイプレコ(Panaque suttoni) 体長25センチ
コロンビアに分布。
黒いボディに妖艶に浮かぶブルーアイ。
古くから非常に人気の高いプレコであるが、近年めっきり入荷量が減少してしまったプレコである。
漆黒の体にシンプルに浮かぶブルーの瞳が人気の理由であろう。
カイザー系

オレンジフィンカイザープレコ(Baryancistrus sp.)オレンジフィンブラックカイザー(Baryancistrus sp.) 
画像・けるぞうさん

シングー川中流域に生息する。
オレンジフィンカイザーは、インペリアルゼブラと肩を並べる小型~中型種の人気プレコである。
流れの強い地域に生息していることから、水槽内には十分な酸素を行き渡らせることが飼育のポイントである。
体に星を散りばめたような美しい姿に惹かれ、衝動買いの対象になりやすい。体長は両方とも25センチ前後である。

主なカイザー・マグナム系プレコ
ゴールドエッジマグナムプレコ(Scobinancistrus aureatus) 体長40センチ
シングー川に分布。
マグナム系といわれるプレコの中でも随一の派手さを持ち、大変美しく古くから人気が高いプレコでもある。
最大で40cmにまで成長。どのプレコにも言える事だが水槽内には十分なエアレーションを施し、溶存酸素量を豊富にすることが飼育のポイントである。
セルフィン系

セルフィンプレコGlyptoperichthys gibbicepsオレンジスポットセルフィンGlyptoperichthys joselimaianus
画・けるぞうさん

アマゾン川全域に分布。
市場に出回っているセルフィンの殆どが東南アジアで養殖された個体である。
名前のように大きな背びれを持ち、優雅に泳ぐ姿は十分に鑑賞に値する魚である。
『お掃除屋さん』などと紹介されることが多い魚だが、実際にはかなり大型になり気性も荒い。
同居魚に舐めつくなどのトラブルも多く聞かれ、持て余されるケースもある。
飼育には覚悟が必要である。
大抵の人は本来のサイズになる前に死亡させてしまうことが多く、その魅力を十分に堪能してる人は少ないであろう。体長は30~50cmにまで成長する。

主なセルフィン系プレコ
サタンプレコ(Glyptoperichthys lituratus) 体長50センチ
ペルーからコロンビアにかけて分布。
いかにも頑丈そうなボディが迫力を感じさせる。
想像通り丈夫で飼いやすいのだが、やはりその性格と大きさがネックになってくるだろう。
人気があるせいか、コンスタントに店頭に並ぶ。
ペコルティア系

クイーンインペリアルタイガーPeckoltia sp.エンペラーペコルティアPeckoltia sp.) 
画像・けるぞうさん

小さく様々な種類が楽しめることから小型水槽でのタンクメイトとして好まれる。
種類の分類も素人目には非常に困難で、ショップの判断を信用して購入する他無い。
小型水槽での苔取りに優れているものの、パイレーツやセルフィンのように全ての苔を舐め取ってくれるのではない。

主なペコルティア系のプレコ
タイガープレコ(Peckoltia vittata) 体長10センチ
非常にポピュラーな小型プレコ。
似かよった種が多数いるが、かなり細かく分類されているようである。
小型で安価ゆえ水槽内の苔取りように導入する人も多い。
但し腹が減ると水草を食害するので餌はしっかりと与える。
インペリアル・その他

インペリアルゼブラプレコ(Hypancistrus zebra)
 画像・けるぞうさん

シングー川に分布。体長10cm。
80年代後半に登場して以来、現在のプレコブームを引っぱる代表的なプレコ。
しっかりと飼いこまれた個体は純白のボディが妖艶に青みがかり、黒い線と共に非常に見ごたえのある個体になる。現地では個体数減少が危惧されているので、繁殖報告は非常に有り難い。

その他のプレコ
マツブッシープレコ(Ancistrus rununculus) 体長20センチ
シングー川中流域に分布。
発見者である日本人松坂氏の名前を取ったプレコ。
ヒゲもじゃの顔を持つプレコで性格は大人しく、にぎやかな混泳水槽では十分に餌を採れずに衰弱してしまう事が多い。繁殖例も聞かれることから本種中心の水槽でじっくり飼育したい種である。
パイレーツプレコ(Liposarcus multiradiatus) 体長50センチ
サッカー、ヒポプレコとして流通してることもある非常に有名なプレコ。
苔取り屋としての知名度は、セルフィンよりもまずはこちらを指す程である。
東南アジアで養殖されているので安価で入手しやすいが、セルフィンと同じく大型になればその気性の悪さから持て余してしまうことがある。
荒くれ者が揃う大型水槽の苔取りとして導入する人もいるが、生傷の絶えない非常に危険な水槽であることは間違いない。
最大で50cmにまで成長する事を加味したうえで、導入を検討するのが吉である。
アグアプレコ(Acanthicus adonis) 体長100センチ
アマゾン川、トカンチス川に分布。
アドニスプレコが一般的な呼称である。
要塞を思わせる重厚かつ攻撃的ななボディは思わず身を反らしてしまう迫力を持つ。
厄介な棘を全身にまとっているにも関わらず、性格は非常に攻撃的で飼育者を選ぶプレコと言えよう。
このレベルのプレコを間違っても残餌魚として飼う人はまずいないだろう。
成魚とは似つかない綺麗なスポットを持つ幼魚を、安易に購入してはならない怪物である。
プレコの飼い方
プレコに水流は必要なのか?
水の淀んだ場所から比較的流れの速い場所まで幅広く生息するプレコの仲間は、当然種類によって水流の有無が変わってくる。
急流に住むプレコには当然水流があった方が良いのだろう。
但し水槽下で実際の川の流れを作り出すのは難しいので、現実にはエアレーションやろ過を工夫するなど、溶存酸素量を多くしてやることで水流不足を補う方法が一般的である。
プレコの飼育には何故流木が良いのか?
苔取り屋と称されるように、プレコにはセルロースを含むコケなどの植物質を食べる食性がある。
流木を含め、植物の宝庫であるアマゾンに生息するプレコは一日中餌を食べている。
流木を好むのはその為であり、また水槽内では貴重な隠れ場所にもなる。
プレコの突然死の原因、寿命は?
自然化では一日中餌を食べているプレコが、水槽内で苔取り、残餌処理という名目で飼われ、お腹一杯餌を食べている可能性は殆どないと言える。
プレコには胃袋がなく、常に餌を食べている理由はそこにある。
プレコの突然死の原因は8割以上が栄養失調と言っても過言ではない。
大切に育てたプレコは10年以上は生きる魚である。
水槽について
アクリル水槽は基本的に不向きであるが、大型種の飼育には欠かせないため、レイアウトには特に注意をはらう。
筒状の焼き物や流木、石組みで十分に隠れるスペースと生活空間を作るようにすれば、直接水槽を齧る心配もいくらか減少される筈である。
パナクエ系やトリム系のプレコなどは特に注意する。

ガラス水槽は表面を傷つけられる心配がないものの、接合部のシリコンを齧られてしまい、水漏れを起こしてしまったケースもある。
歯の丈夫なトリム系プレコは特に注意し、この場合もレイアウトを工夫する。
ろ過について
プレコ飼育においてろ過の役割は
①物理・生物ろ過
②水流を作り出し、溶存酸素量を増やす
である。
何度も書いているように一日中餌を食うような魚なので、水の汚れ方も相応に早い。
また流木の削りカスなどでろ材自体をを目詰まりさせてしまうこともある。
ろ過には強力なメインフィルターと、スポンジやパワーフィルター等のサブフィルターを用意する。
ろ材には目詰まりしにくく多孔質なものを選び、水質悪化には十分注意する。
ろ過には水流を生む効果があるので、サイズはワンランク上のものを選ぶと失敗がない。
水温・水質について
一部養殖のプレコを除いて高温に弱い。
ただ多くのプレコの故郷であるシングー川は、水深よっては水温が高いらしく、高温域に生息しているプレコもいるそうである。つまりは高温が苦手というよりも、溶存酸素の低下の方に重きがあると思われる。
但し総じて24~26℃の水温を好むのは間違いない。
最近の夏の暑さは異常なので酸素不足の解消は勿論、場合によってはクーラーの導入も検討した方が無難であろう。最近は水温を2~3℃下げられるお手軽な小型ファンも出回っている。
極端な酸性・アルカリ性でない限り、水質悪化にさえ気をつければ特に難しいことはない。
我が家では弱アルカリ性で飼育しているし、インペリアルゼブラの繁殖レポート等を読んでも、多くのブリーダーが弱アルカリ性の環境で繁殖を成功させているようである。
難しい水質調整云々よりも、まずは水質悪化、酸素量、水温を気をつける。
餌について
プレコの突然死の原因は殆どが栄養失調である。
残餌や少し生えた苔だけでは絶対的にプレコには足りず、プレコにきちんと行き渡るように餌を与える必要がある。
また植物質の餌だけでなく、他の配合飼料やアカムシ、イトミミズといった餌も与える。
現在は専用フードなるものが数多く販売されているので、これに冷凍赤虫やブラインシュリンプ、海水魚用のドロマリン、また肉食魚用のキャットなどを混ぜて与えてやると良いだろう。
変わったところでは、キュウリやほうれん草を与える人もいる。
この場合、水質悪化には十分に注意しないと恐ろしいことになる。
プレコを長期飼育したいのであれば、きちんと餌を与えることが重要である。
レイアウトについて
プレコ飼育には流木が欠かせない。
どの種も好んで齧るので必ず入れるようにする。
流木や石組み、また筒状の焼き物など、隠れ家となる場所を沢山作ることでプレコに余計なストレス与えないようにする。
底砂はシリコンを隠すことが出来るので、齧る危険がある種には敷くようにする。
水槽内にヒーターがある場合には、必ずヒーターカバーを使用する。
水草は間違いなく食害される。
メンテナンスについて
水質悪化に弱く、水を非常に汚すので定期的な水換えは必須である。
できれば1週間に一度、1/3~1/2程度の水換えを行い、ろ材の目詰まりにも気を配る。
流木の削りカスは想像以上に凄く、ウールマットの洗浄も忘れないようにする。
水換え頻度はろ過や水質にもよるので観察を怠らないようにすること。
混泳について
プレコを苔取りや残餌処理として安易に水槽に導入するのは非常に危険である。
一般家庭でよく目にするセルフィンやパイレーツも実は30cm以上に成長し、混泳向きな魚とは決して言えない。
特に大型種は気性が荒く、夜行性なので同居魚に相当のストレスを与えることになる。
また他魚の体表を齧ってウロコを剥いだり、柔らかい腹部を狙って攻撃したりと凶暴な一面を持っていて、特にポリプテルスとの相性は悪い。
プレコ自身が餌を採れない大食漢な魚や動きの素早い魚との混泳もお勧めしない。
プレコ同士の混泳
狭い水槽内ではテリトリーを形成するため、プレコ同士の混泳は難しい。
消灯後の小競り合いはかなり深刻で、飼育者の気持ちを萎えさせるほどである。
幼魚のうちはそれほど目立たなくても、体が大きくなるにつれ次第に深刻さを増していく。
特にトリム系などの大型プレコは、凶暴かつパワフルなため混泳させない方が無難である。

プレコを混泳させるポイントとして
・水槽を大きくする。
・流木などで複雑にレイアウトを組み、隠れ家をしっかりと作ってやる。
・体の大きさに合わせ、弱い個体、強い個体の居場所を確保する。
・餌が十分に行き渡るよう配慮する。
場合によっては底砂は無い方が管理しやすい時もある。
全国にはプレコのみを複数飼育している方も多く、プレコサイトも多く見かける。
上手く混泳させている人達の飼育法を参考にしてみるのも良い方法である。