熱帯魚の生活空間である水。
この水の中には熱帯魚が健康に暮らす為のあらゆる要素が含まれています。
熱帯魚を上手に飼うには「ろ過バクテリアを十分に効かさせた良い水」が必要です。
水を知ることで様々なトラブルが回避でき、また今まで敬遠していた難しい種類の飼育も始められるかもしれません。
ここでは水について紹介していますので、その仕組みなどを参考にして下さい。

水について
使用する水は基本的に水道水でしょう。
地域によってその成分は異なるものの、まずは水道水に含まれる“塩素”や“重金属”を中和、無害化します。
市販の中和剤はこれら有害物資を素早く無害化してくれる優れものです。
小型種や入荷直後の個体、病気の回復後、水質に敏感な魚の導入時には必ず使用しています。
また汲み置きした水も塩素を飛ばす事が出来ますので、小型水槽などの換水には便利です。

我が家でも大活躍の水質調整剤。
コントラコロラインは塩素の中和、アクアセイフは重金属の無害化、更には保護コロイドにより表皮や鰓を保護してくれる。特に使い勝手が良いのがアクアセイフで、薬品耐性の低い古代魚やナマズなどを荒療法した後など粘膜を保護する上でも使える優れものです。
またビタミンB1によりストレスを緩和させる役割もあり、一家に一本、必ず用意したい調整剤です。

水質
水質はやpH(ペーハー)や硬度など色んな意味を含んでいます。
当然自然界には様々な水質があって、熱帯魚も生息地によって様々な水質に住んでいます。
熱帯魚の故郷として有名なアマゾン川は、大量のスコールと落ち葉などから染み出す酸物質から、弱酸性の軟水の環境が維持されています。
またタンガニイカ・マラウイ湖など、アフリカの湖では石灰岩層などの影響から、弱アルカリ性の硬度の高い水質となっています。
そのため色んな魚を混泳させるならば、水質を同じにさせる必要があります。
このように水質を知ることは熱帯魚飼育にとって非常に重要な要素と言えます。

飼育水をより生息地に近づけてやれば繁殖や本来の発色を観察することが出来るかもしれません。
水質には様々な要素が含まれ、それらは非常に密接な関係にあります。
一度その仕組みさえ理解してしまえば、それぞれの数値によって自分の水槽の状況が瞬時に分かる、非常に便利なものです。
pH  ※通常指数pH6.0~8.5
水質を知るうえで重要なpH(ペーハーorピーエッチ)。
このpHは炭酸塩硬度(KH)と二酸化炭素(CO2)の量によって変化し、
その値は水中に含まれる水素イオンと水酸イオンの濃度を表したものです。

水素イオンは陽イオン(電子を失った状態)と呼ばれ、この水素イオンが増えると酸性となります。
水酸イオンは陰イオン(電子を得た状態)と呼ばれ、これが増えればアルカリ性となります。
それぞれのイオンが水中に増え過ぎると(強酸性や強アルカリ性など)水質は安定せず、逆にお互いが少ない状態が中性と呼ばれ、安定した状態と言うわけです。
pHは0~14の数値で表され、中性を7.0として0~6を酸性8~14をアルカリ性といいます。

例えば水換えの後から次の水換えまで測定し、水槽の移り変わりを確認します。
pHが次第に降下していくのか、それとも急激に降下するのかによって、現在の飼育環境の見直しもできるわけです。

■pH変化の要因
通常生物ろ過が機能し始めると、水中には硝化作用により水素イオンが増加する為、pHは酸性に傾いていきます。つまり水質が悪化することによりpHは下がって行きます。
また二酸化炭素は水に溶けると炭酸に変化し、炭酸も“酸”であるのでpHは降下します。
逆に汲み置きした水やエアレーションをした場合、水中の炭酸が抜ける為、pHは上昇します。

■pH値異常による弊害と対策
pHの異常値により、pHショック(狂ったように泳ぎ最悪は死亡する)、病気の誘発、ストレス症状、粘膜の異常分泌、産卵機能障害、生理機能障害など様々な障害が起こりえます。
そこで、新たに魚を導入する場合には必ず水合わせを行います。
特にワイルド個体や水質に対し敏感な魚には慎重に行いましょう。
炭酸塩硬度(KH) ※通常指数2~8゜dH
pHと非常に密接しているのがこの炭酸塩硬度(KH)です。
水中の炭酸水素イオンに対応して変化します。
炭酸塩硬度が高いとアルカリ性に傾き、低いと酸性に傾きます。

このKHはpHの変化を緩和する働きがあり、KH値が異常だと老廃物や残餌によりpHが急降下するなどの水質急変の恐れがあります。
一般的な淡水(水道水)の炭酸塩硬度は2~8°dHですので、この値ならばpHの急激な変化は防げると言うわけです。
但し日々の硝化バクテリアの働きにより炭酸水素イオンは減少し、結果KH値は下がっていきます。
つまり水質は次第に酸性(KH下がるので)に傾く為、水換えはこのKH値を戻す作業でもあるわけです。

■炭酸塩硬度値異常の弊害と対策
pHの急変、ストレス症状、病気の誘発、生理機能障害などが起こりえます。
 総硬度(GH)  ※通常指数3~10゜dH
硬度とは水中のカルシウム塩やマグネシウム塩の量で変化し、多ければ硬水、少なければ軟水です。
硬度の高い水(硬水)はアルカリ性になりやすいという性質を持ち、硬度の低い(軟水)は基本的にそれによってpHが上下することはありません。
弱酸性の環境を作りたい場合、市販のpH低下剤をいくら使用しても、硬度が高い水は次第にアルカリ性へと傾いていきます。
一般的な淡水の硬度は2~10°dHです。

■硬度値異常の弊害と対策
ストレス症状、病気の誘発、粘膜の異常分泌、産卵機能障害などが起こりえます。
アンモニア(NH3 /NH4+
※理想的な数値は0mg/lとし、0.25mg/lから弊害が発生。5mg/lでは生存不可能となる。
アンモニアは水の中に含まれてはならない、魚にとっては触れるだけで死亡する非常に有害な物です。
無害なアンモニウムも、pHなどの変化によりアンモニアに変わる可能性があります。
これらは魚の糞尿、残餌、枯葉などが水中で分解し発生します。
通常はろ過バクテリア(ニトロソモナス)により亜硝酸へと分解されます。

■アンモニア・アンモニウム値異常の弊害と対策
目の白濁、遊泳不可、水底で動かない、呼吸困難、気が付けば死亡など。
アンモニアが検出される水槽では根本的な飼育の見直しが必要です。
ろ過、飼育数、餌の与え方を再検討し、直ちに水換えを行いましょう。
 亜硝酸(NO2
※理想値は0.3mg/l以下とし、3.3mg/l以上ではほとんどの魚にとって非常に危険な状態となる。
ニトロソモナスにより分解されたアンモニア、アンモニウムが亜硝酸へと変わります。
通常はろ過バクテリア(ニトロバクター)により硝酸塩へと分解されます。

■亜硝酸値異常の弊害と対策
目の白濁、元気なく泳ぐ、呼吸困難、水底で動かないなど。
亜硝酸が検出される水槽ではまずろ過の再検討が必要です。
その他に過密飼育、餌の与えすぎ、酸素飽和量が少ないことが挙げられます。
直ちに水換えを行い、水質改善しましょう
硝酸塩 (NO3- ※通常指数 10mg/l以下。詳しくは下表を参考。
ろ過バクテリアの分解で最終的に残る、魚にとっては比較的無害なものです。
但し溜まり過ぎると魚は見る見る調子を崩しますので、水換えにより取り出します。

■硝酸塩値異常の弊害と対策
病気の誘発、苔や藻類の発生、体調異常、最悪の場合は死に至るなど。
過度の硝酸塩濃度の上昇は、魚数が多い、またはろ過の容量不足が挙げられます。
水換えだけでは根本的な解決とならないので、先ずは飼育設備の見直しをする必要があります。
通常は適切な水換えを行っていれば大丈夫です。
 硝酸塩(mg/l)水の状態 水草の状態  藻類の状態  魚への影響 
12.5以下最良影響は少ない適切な環境
12.5~25発生の促進
25~50換水が必要発生数値
50~100半量の換水が必要増殖やや危険
100以上全水量の換水成長が鈍る大繁殖危険
 二酸化炭素(CO2)
※水草に適した溶存二酸化炭素量は5~15mg/l程度。
植物が光合成を行うための重要な存在。
水草が健全に育つには水中に二酸化炭素が溶け込んでいることが前提となります。

■二酸化炭素値異常の弊害
20mg/l以上になると鼻上げや呼吸困難、最悪は窒息死などに陥る。
5mg/l以下では種類によっては水草が上手く育たず枯れてしまうことも。

最適な水質に維持できる便利な簡易浄水器

水質の測定
水質検査薬もしくは検査器は用意しておくことをお薦めします。
とくに水質悪化を知る上で重要なpH・アンモニア・亜硝酸・硝酸塩は、自分の水槽が置かれている状況が判断できる便利なものです。
これら水質の測定により、現在の状況が把握しやすく対応もとりやすくなります。
頻繁に測定するpHには便利な電子式をお勧めします。

※各塩類測定の注意
アンモニア・亜硝酸・硝酸塩はどれか一つだけ測定しても意味がありません。
必ず3つ測定することが重要です。

その他水質に影響を与えるもの
水質悪化だけではなく水槽内の様々な状況により水質は変化します。
酸性化・・・二酸化炭素の添加、ピートモスの使用、流木、pH降下剤など。
アルカリ化・・・サンゴ、硅砂、大磯砂、エアレーション、硬水によるアルカリ化など。
水換えについて
水質を安定させるのは熱帯魚を飼う上で重要なことです。
硝酸塩による酸性化を比較的緩やかにするため、ろ材にサンゴなどを使用した場合、一概にpHの変化だけでは水質の変化は読み取りずらいものです。
大切なのは日頃から魚の調子や餌食いなどを観察し、少しでも異常があれば水質を疑うようにします。

熱帯魚飼育において最も大切なのが水換えです。
実際どんなトラブルにおいてもこれに変わる対処法は存在せず、水換えなしに熱帯魚を飼育をしている人はいないでしょう。
水換えは必要ならば毎日でも構いません。
ろ過能力や水量によってだいぶ変わってきますが、基本的に水換えこそが水質維持に大切だと思います。
水換えの量は四分の一でも構いません。
余り多量に水換えをしてしまうと、水質の急変による弊害も大きく、魚にとってストレスを与えかねません。
東南アジアのファームのように、一定の水質条件での換水と違い、一般家庭での水換えは慎重に行うのが懸命です。
飼育している魚種や数、給餌頻度などによって異なりますが、一週間に一度の水換えが行えれるのが理想的です。
水換えの手順
1.水を排出する

小型水槽の場合はバケツに排水し、大型水槽の場合はホースを風呂場などに持っていき直接排水してしまうのが楽です。
始める前に周辺器具のコンセントを必ず抜くこと。
ヒーターやサーモスタットのコンセントを抜かずに空気中に露出させてしまうと、故障の原因となります。また水位が下がったままろ過を稼動させておくと同じく故障の原因に繋がります。

2.底床クリーニング

水換え時に同時に行うのがこの底砂クリーニングです。これはホースやポンプに割り箸などを輪ゴムでくくりつけ、排水時に底砂をかき回すようにして底砂のヘドロや残餌を取り除きます。
全てを綺麗にしようとせずに、週ごとに掃除する場所を変えて行うのがポイントです。

流しやふろ場に流せると楽

3.ろ過、ろ材の掃除

物理ろ過をするウールマットは水換え毎に綺麗に洗浄します。
ろ材も目詰まりを起こす前に定期的に清掃しましょう。
飼育水をバケツなどに入れて、その中にろ材を移して洗う方法もありますが、私はそこまで神経質に洗ったことはありません。

4.水を入れる

よほど水質にうるさい魚を除き、ある程度温度を合わせた水を水道から直接注入します。
水質に敏感な魚種を飼育しているなら簡易浄水器などを通して、十分に水温と水質を合わせた水を使って行います。

最後に
私自身、そこまで神経質に管理しているわけではありません。
基本的な知識さえ身につけておけば、いざという時の対処もしやすいですし、せっかく飼い始めた魚を死なせてしまうリスクを回避できます。
水道水に含まれる塩素は有害ですが、地域によっても差があり、我が家では水道水をそのまま使用して魚が調子を崩したことはありません。
この辺のさじ加減というか、管理の仕方は慣れとしかいい様がありませんので、よほど水質に敏感なワイルド(野生種)個体でない限り、水換えのストレスよりも水質の悪化の方が遥かに危険で悪影響があるように思えます。
熱帯魚の異変は餌食いと体色に速やかに反映されるので、日常の観察を怠らないようにしましょう。